新しい美術作品
小社では、2010年から、
「ポップアートシリーズ」と命名して、
版画を製作・販売しておりますが、
最初から、「複製原画」という名称は使わないと決めておりました。
理由のひとつには、「複製原画」には定義がなく、
例えば出版界では、
四色分解のオフセットの印刷物でも
「複製原画」と呼ばれておりました。
また、これは2000年前後のことだったと記憶しますが、
某美術会社が、手塚治虫、松本零士、石森章太郎、
のリトグラフやシルクスクリーンを販売していたことがあります。
これが20万〜50万というもので、
購買者に高額なローンを組ませていて、
ネット界隈では「エウリアン」などと呼ばれておりました。
そして、さらにもう一方に、
印刷所の高精細印刷で作られた「複製原画」というのがありました。
こちらは受注生産で、限定部数はなく、作家のサインもないようなもので、
いわゆる「キャラクターグッズ」のような扱いでした。
小社では、これらのどれでもない、
クオリティが高く、値段も適正で、作家のアート作品、
「新しい美術作品」というものができないかと思い、
版画の販売を始めた次第です。
版画の制作にあたり、
ジクレーという手法に決定したのは、
版画の摺師の尾崎氏(いつもうちがお願いしている人です)の
意見によるものです。
当時のぼくはリトグラフやシルクスクリーンのほうが
いいのではないかと思ってましたが、
これらは、マンガで言う「描き版」と同じ
(ごく初期の手塚治虫作品などで知られる手法)で、
つまり原画をなぞって、「印刷版」を作るというものなのです。
もちろん摺師の腕が生かされるところではありますが、
ジクレーは、原画を撮影・スキャンして作られるため、
作家の描線を「完全に再現する」にはこれしかないと思いました。
販売価格を決めるのに際して、参考にしたのは、
実は、メビウスでした。
当時はメビウスはまだ存命で、氏のフランスのサイトに、
ジクレー版画(もちろんサイン付き)の販売サイトがありました。
小社が出しているのは「新しい美術作品」です。
そして、「新しい美術作品」として御紹介できる作家のみを、
小社は販売していると自負しております。
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吉田保